2004年のイギリスで製作、ということで、全然知らない作品でした。
監督は、マシュー・ヴォーンという人で、ガイ・リッチー人脈の人らしいんですが、G・リッチーとは一味違うスタイリッシュさがあって、好感。
良い作品でした。
面白かったです。
原作の小説がある、とのことで、映画化に関しては、脚本もその作家が担当してます。この、シナリオが、まず良い。
かなり込み入ったストーリーで、まぁ、幾つもどんでん返しを、みたいな作りになってるんですが、なんていうか、ただ“裏切る”だけじゃない、と。
ちゃんとストーリーとして成立してて、無理のない形でひっくり返していく。
これは、なかなか出来ないですよ。
後から考えても、ちゃんと辻褄が合うようになってたりとか、“ちゃんと”作ってある、という感じで。
破綻がない。
これは、画や演技も含めた、作品の映画としての要素ひとつひとつがちゃんとシナリオを支えている、という、ことだと思うんですね。
ひとつひとつの要素が、作品を構成する要素としてそこに在る、という。
回りくどい書き方をしましたけど、要するに、バランスが良い、と。
そういうことだと思うんですけど。
ストーリーは、麻薬密売組織の一員である主人公が、自分の“ボス”からなんかやっかいな仕事を振られて、なんか振り回されてだんだんドツボに嵌っていくんだけど、というのが大まかな流れ。
D・クレイグは、組織の中の小さなグループのリーダーで、仕事は卸売り。
ワリとやり手で、振る舞いもクールで、オープニングも、主人公のクールなモノローグから始まるんだけど、と。
その組織に、かなり“ギャング度”が高い、荒くれ者たちのグループが、“対岸”のオランダ・アムステルダムから大量のエクスタシー(錠剤)を持ち込んできて、買い取ってくれ、という話になるんだけど、その大量の錠剤は、実は“製造元”のセルビア人組織から、買い付けてきたモノじゃなくって、銃で脅して奪い取ってきたモノで、つまり盗品だった、と。
で、冷血で知られるセルビア人組織は、奪還と制裁のために、ヒットマンをロンドンに送り込んでくる。
主人公は、金額で折り合いが付かない、という理由で、その取引を嫌がるんだけど、自分のボスの命令で、その盗品の大量の錠剤を、買い取って、売りさばかなくてはならない。
同時に、そのボスから、別の仕事の話があって、それは、ある娘を探し出してくれ、と。
育ちのいい娘なんだけど、ドラッグを覚えちゃって、ジャンキーの男と一緒に失踪してて、ということで。
で、主人公は、自分の“配下”の2人組の男に、その娘を探し出すように命令する。
で、なんかごちゃごちゃ話が進んでいくんだけど、ストーリーが展開するにつれて、主人公はどんどん追い込まれていく。
ドツボ。
にっちもさっちもいかなくなってくる。
セルビア人のヒットマン(名前は、ドラゴン。ストイコビッチと同じ名前)は超凄腕だし、娘はなかなか見つからないし。
で、ここで、その“ボス”よりも強大な“大ボス”みたいなのが登場するんですね。
この辺の展開は、ホントに面白いです。
その“ボス”が実は裏切り者なんだぞ、と。その“大ボス”が告げるワケです。
これって、実は結構新しいですよねぇ。
自分のボスが裏切り者だった、という。
そもそも今の事態は、その“ボス”と“大ボス”の対立が原因だった、という。
ビックリする主人公。
そして、そのボスを射殺。
で、その夜は、バッドトリップしちゃうんだけど、翌朝には、クールにしゃきっとして出てくる。
この辺の描写も、斬れ味があって良いです。
で、ボスは殺したんだけど、主人公のドン詰まり状態は解消してなくって、今度はその大ボスの圧力を受ける。
セルビア人組織と、大ボスと、盗品の“ブツ”を持っている荒くれ者たち。
そのにっちもさっちもいかない状態を、一気にズバッと解決するんですけど、それがなんと、警察で、という。
これは面白かったですねぇ。
それで、押収されたブツを、また持ってきて、と。
巧いです。
この辺は、原作の小説の筋書きなワケで、まさしくシナリオの勝利ということなんですけど、見事ですよねぇ。
また、D・クレイグの、ニヒルな感じの表情がいいんですよ。
恐らく作品の主題である、ニヒリズム/ペシニズム、「人間万事塞翁が馬」みたいな、因果応報的な雰囲気を、身体全体で物凄く巧く表現している。
いいです。
この、作品の要素すべてががっちり噛み合ってる感。
うん。
知らないで観たんですが、大満足の作品でした。